沖縄の梅雨入りは早い。以前から娘は風邪を引くとぜんそくのような症状が出る。その日、昼に学校から咳がひどくて辛そうなので、迎えに来るようにとママに呼び出しがあったという。
その足で近所の病院に行き、薬をもらって帰ってきて早めに休ませた。しかし夜中に、突如大発作を起こしたのであった。こういうとき、遠くにいるデメリットを痛切に感じた。何もしてあげられない。もう、ママに任せるしか方法はない。ママは正看護師である。入院の可能性もあると推測していた。119番に電話をして小児の救急の受け入れで一番近い病院を確認した。
「救急車を出しましょうか?」と聞かれたが、ママは自分で行きますと真夜中にクルマを飛ばして、総合病院に向かった。そこで診察と吸入治療をし、落ち着いたので家に帰った。
「だって、陥没呼吸で苦しそうだし、唇も真っ青で本当にどうなるかと思った。どうしてもっと丈夫な子に産んであげられなかったんだろう。かわいそうで、かわいそうで」。そう、早朝にママは電話口で泣き崩れた。義母も帰京し、強がっていたものの、やはりひとりで心細かったのだろうと思う。
その日の午前、近所の最初にかかった病院とは別の病院へ行った。ぜんそくですね。今日は3時間おきに吸入に来てください。もし症状が治まらなければ、入院をしなければいけないかもしれない。といわれ覚悟していたが、少しずつ症状は落ち着き、このまましばらく吸入に通って様子を見ましょう。そして3日後。
「明日から学校いっていいですよ。もう大丈夫です」。「えっ、 だってぜんそく?」。
「ぜんそく発作が起きたのは間違いないですが、ぜんそくとは断定できません」。ママはポカ〜ン。
「もう、泣いてソンした! バッかみたい!」とママは電話でいつもの調子を取り戻していた。娘とも話ができ、「ちょっとね、おむねがくるしかったけともうだいじょうぶ」。胃が軽くなっていき、やっとパパは安心した。
「もうしんぱいしなくていいからね。なんかいうことあるでちょ」。
「あー、大好きだよ」。「で、ほかには?」と娘。どう答えても「ほかには?」という質問がとぎれない。そのしつこさは元気の証だね。逆単身パパは、まったくもって無力である。そしてこどもに親は育てられることを痛感する。
column by 細村剛太郎/Hosomura Gotaro
アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどを放浪後、出版社にて雑誌・書籍編集者として勤務
退社後、フリーランスとしてメンズ雑誌、広告、ウェブマガジンなどで活動
十数年前、ユルい空気に誘われ東京から湘南に移住し、波と戯れる
家族の沖縄移住を機会に、いい年こいて某大学院文化科学研究科に在籍
新メディアを研究中
5歳の女の子のパパである
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