さて、今年もやってまいりました、子供たちのための、いや、それを言い訳にした大人たちのための音楽イベント、SonarKids(ソナール・キッズ)。
Sonar(ソナール)はもう数年前から東京でも開催されていることもあって日本のみなさんにも知られるようになってきているかもしれませんが、バルセロナ発祥の、「最先端国際音楽フェスティバル(Advanced Music Festival)」というものです。現在ではバルセロナ、東京、ア・コルーニャ、シカゴで開催されており、コンテンツだけでなく開催地も年々国際的に
なっていて、バルセロナには毎年のようにヨーロッパ中の音楽ファンが集います。エクスペリメンタルだけれど、ワクワクできる、とびきり楽しくて珍しい音楽を世界中から集めてみんなで三日三晩踊る、というようなとてもクールなお祭りで、私も長男が産まれるまで毎年楽しみに通っておりました。ところがいざ子供が産まれて親になってみると、小さな子供を家に残して夜中にコンサートに行くなんて事もなかなかままなりませんよね。そんなペアレンツ世代の創始者が、じゃあ昼間に子供と一緒に踊れるフェスティバルをやればいいんだよ!と3年前から開催されるようになり大好評を博しているのがこのSonarKidsなのです。
子供のための音楽、というと、やはり童謡から始まって、かなり頑張っても「なじみの歌のロック・バージョン」といった感じになりがちだと思いますが、さすがこのフェスティバルはSonarの血を引いているだけあってひと味もふた味も違います。大人も見たい、聞きたい、踊りたいアーティストを集めて、アーティスト達の側にちょっとだけ子供に近づいてもらうのです。というわけでフェスティバルの定義も、「子供とその親達のための、クリエイティヴな音楽とエクスペリメント・フェスティバル」となっています。
大人向けSonarにはないキッズだけの特権として、観客参加型のワークショップや、音だけでなく絵を描いたり、おもちゃで遊んだり、ビデオを見たりといった様々なエクストラ・イベントが同時開催されていて、かつのんびりリラックスして昼寝をしたり、持ち寄ったランチでピクニックをしたり、オムツ交換台を多数そろえたりと、子供達が飽きないよう、グズらないようにいろいろな配慮がされています。3年目ということもあり、毎年そういった配慮の進化が見られるのもうれしいところ。まさにかゆいところに手が届くサービスも満載なのです。
こちらはPaul Frank(ポール・フランク、アメリカ人デザイナーで、大人服にも使用されているこのキャラクターがこちらでも大人気)と一緒に絵を描こう!のコーナー で、リラックスのためのデッキチェアを昇降台?にして運動しはじめた次男のイウ。どうやら彼なりに踊っているつもり、みたいです。
そしてこちらはGills
Peterson(ジャイルス・ピーターソン)のコンサート。DJによる音楽に合わせて、両脇でスペイン語で子供達(とその親達)に話しかける男女の二人組が場を盛り上げつつ、大人も子供も好きなように踊ります。中には踊らないでステージをじっと見つめながら聞いていたい子供もいるし、人口芝生の上で座っておやつを食べたり、ママのおっぱいを飲んでいる赤ちゃんもちらほら。ちなみに、子供の聴覚への影響を配慮して、音量は一般の大人向けのコンサートより落としてあるそうです。もちろん決して静かではありませんが、昼寝をしている子供が相当数見られたのは、なんだか和む景色でした。
一緒に来ていたブルーノ君(7ヶ月)もほら、すっかりスヤスヤ夢の中です。
そしてこちらは楽しみにしていた、去年のSonarKidsでコンサートを大成功させたBrodas(ブローダス)というカタルーニャ人の人気グループによる「ストリート・ダンスのマスター教室」。大人だってちょっとやそっとじゃ踊れないダンスを、1時間弱のコースでみっちり練習します。これはちょっと上級者向けなので、本当に楽しめるのは7、8歳以上。ちなみにSonarKidsの対象年齢は0歳から14歳まで。そう言われてみてはじめて、普通のSonarの対象年齢が15歳以上ということに気づきました。それって若くないか!?いやそんなものですよ。最近のティーンというものは。
子供にダンスを教える重要なコツは、どうやらボキャブラリーにあるようです。「うえうえ、したした、ピザを持つ!投げて下がってハイ、ポーズ!」という感じで、ただ見てマネするだけよりも、適切な比喩と言葉があるとダンスの動きがずっと分かりやすいのです。ちなみに使用されていた音楽はJames Brown(ジェームス・ブラウン)の「ゲロンパ!/ Get Up (I Feel Like Being
Like A) Sex Machine」のリミックス。何度か練習した後、子供達もステージに上がってびっくりするほど上手に踊っていました。下で見ている大人達はもちろん狂喜の大歓声!
そして踊って疲れたら、おもちゃコーナーで一休み。
そしてその一角にも、おもちゃに見せかけた「インタラクティヴな楽器」が用意されています。これはMonica
Rikic(モニカ・リキック)による「Buildasound(ビルダサウンド)」というスポンジと布で出来た積みブロック。積み方を変えると、いろいろな異なる音とリズムが聞こえます。みんなで高く積み上げて、積み終わったら耳を澄ませてみんなで作った「作品」を聞いて、そのあとバーンとみんなで壊すのがまた楽しいのです。
そんなわけで、大人踊りまくり、子供は最後疲れて昼寝しまくり(笑)な楽しいイベントが今年も幕を閉じました。DJ教室などはまだまだ5歳の長男、温には難しくて参加できなかったのですが、レコード・ディスクやパソコンだけでなく、iPadや先ほどのおもちゃのように、DJになるための技術の方がどんどん子供に近づいて来ていますから、本当に近い未来に、親達が、小さな子供達に踊らせてもらえるようになりそうな予感がします。
ありがとう、SonarKids! また来年!
Column by Tomoko SAKAMOTO