-009.週末のポエム

フランスの小学校では詩(ポエム)を覚えるという宿題が頻繁に出る。一生懸命繰り返して覚えているのを聞いてもあまりピンとこないものも多いが、今週末の宿題はありとキリギリスらしいので、よし、一緒に頑張ろうという気になった。
 
ふんふんと聞いていたら、あれ、ちょっとなんか変じゃない?娘のノートを見ると、作者は、フランソワーズ・サガン。もともとは誰の話? と聞くとJean de La  Fontaine/ジャン・ド・ラ・フォンテーヌだそうな。こちらも私たち日本人にはあまりなじみがない。
 
イソップじゃなかったっけ?それにCigale ってセミでしょ?キリギリスじゃない?などと???がいっぱいになってしまった。調べてみると、イソップというのはギリシャの詩人で紀元前600年ごろの人物らしい。ジャン・ド・ラ・フォンテーヌは17世紀に、このイソップ寓話をもとにした書物をフランス語で発表した。ギリシャでも、歌い続けたのはセミだったけれど、フランスアルザス地方より北には、セミが存在しないため、イラストにはキリギリスの絵が使われていたようだ。日本に伝わった話は、この北のほうからのものらしく、それでおなじみのキリギリスバージョンとなったようだ。


小さい時から、知ってるイソップ童話の話ではキリギリスが楽しく歌い踊ってる夏の間、ありは一生懸命に働いて冬の食糧をためる。冬になって、 困ったキリギリスがありに、何か食べ物をくれないかと頼みに行く。日本でよく紹介されているものはここで、怠けているとこういう事になるから、働ける時に 働かないとだめですよと教えつつ、食べ物をあげるパターンが多いようだ。フランス版Jean de La Fontaine はこうはいかない。最後に、ありに、「夏の間何してましたか?」と聞かれたセミは、「歌ってました。」と答える。するとありは「では、踊りなさい。」と冷 たく突き放すのだ。これだけでも、お国柄というか、世の中やっぱり甘くないよなーと思っていたけど、今度はフランソワーズサガンときた。

 

さて、そのサガンバージョンはというと、冬の食べ物を一生懸命貯めたありは、春が近くなって多すぎるストックに埋もれ困ってしまうのである。 そこで、隣人のセミ(キリギリス)に買ってもらえませんかねーと相談に行く。セミは「寒い冬の間何してたんですか?」とありに聞く。「朝も晩も貯めてました。」「あー貯めたいたんですか、じゃあ、今度は安売りしなさい。」とセミは言う。このセミの態度に自由に人生の一瞬を楽しむアーテイスト、サガンの姿が重なる。確かに短い人生であっても、それを堪能したのはきっとキリギリスのはず。
 
フランスには日本のように文部省が作った教科書がない。それぞれの学校で教師達がカリキュラムを相談して考える。だからこの詩だってコピーを 自分たちのノートにはってイラストを書く。9歳の子供に、ひとつの物事にだっていろんな考え方、解釈の仕方がある事をこんな形でさらっと提示してくれる教 育っていいなあと思った。フランス人がデイスカッション好きで自分の意見を発言するために必死になるのも、こういう子供のころからの教育が背景にあるんだなあと改めて納得した。
 
フランソワーズサガンの本"La fourmi et La cigale" J.B Drouotの素敵なイラストと共にStockより出版されているので、おすすめ。

column by ジャックゴルノー 純子/Jacgorno Junko
アクセサリー・デザイナー/たまにコーディネーター
2007年よりヴィンテージパーツを使用したアクセサリーブランド”j.jacgorno”をはじめる
作品はクリエーターが集まる展示会やマレ地区のブティックCULOTTE紹介
娘二人の母でもある

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コメント: 1
  • #1

    shizuka (水曜日, 08 2月 2012 22:13)

    なるほどなぁ、と思って興味深くよませていただきました。日本とは違うんですね。