-009.一年目の初日の出と、鯉のぼりワークショップについて

みなさん、ちょっとご無沙汰してしまいましたが、こんにちは。
目の回るような日常に振り回されてしまっていましたが、この原稿を書いている今日は、2012年3月11日。
そう、東北の大震災からちょうど一年目の日です。

パリとバチカンと連携して、ここバルセロナでも、早朝日の出の直前6時46分、日本の午後2時46分に、皆で浜辺に集まってろうそくや折り鶴を手 に、一分間の黙祷を捧げる会が行われました。私が家を出たのはまだ薄暗い6時半頃で、たまたま道で通りかかった日本から来た卒業旅行と思われる早起きの学 生さんたちにも声をかけながらビーチまで辿り着き、さあこれからいよいよほんのりと明るくなってきたと言う所で黙祷が始まりました。一分間の黙祷の間、聞 こえるのは静かだけれども力強い波の音だけです。いつもはこんなに美しい波の音ですが、この地中海まで遠くつながっている太平洋の海の水によって、一年前 にたくさんの人の命が失われてしまったのだと思うと、とてもやるせない気持ちになりました。

 

そして、皆で黙祷を捧げ終わってほんの少し経った所で、ちょうど海の真ん中に日の出が現れました。初めて気がついたのですが、日本の国旗である日 の丸は、世界中どこからでも見える太陽というユニバーサルな存在の、朝出て来たばかりのこの瞬間だけを切り取って絵柄にしたものなのですね。写真では赤い 地に白い玉のように見えていますが、肉眼で見ると濃いピンクのような赤い色をしています。太陽は多くの国で黄色い丸として描かれますが(そして実際には白 ですが白では見えないので黄色に描かれています)こんな風に、あるシンボルの特別な(しかも写真では無理で肉眼でしか捉えられないような)瞬間を国旗にす るというアイディアは誰が最初に思いついたのか分かりませんがとてもかっこいいな、と思いました。

そしてこの日に福島へ届くように、3週間ほど前、温(長男6歳)の学校とイウ(次男3歳)の保育園で、鯉のぼりワークショップを行いました。これ は福島美術館が主催していたもので、世界中から鯉のぼりを集めて福島空港に3月11日から5月5日まで飾るという壮大な企画「Koi 鯉 アートのぼり」に参加させてもらったものです。詳細はこちら。(http://wa-art.com/koi/)

決まった形の布に子供たちに絵を描いてもらうというものですが、なにせ2,3歳の子供たちに絵の具の筆をもたせるわけですから、イウの保育園では さあ大変なことになりました。これがその時の様子です。まあ、「目じゃなくてウロコのところを描いて」といってもそうはならなではみだしちゃったりするだ ろうなあ、くらいには思っていましたが、布の周り(紙を貼って保護してある)、床、壁、子供たちの着ているスモック、子供たちの手、顔、髪の毛に至るまで それはそれは見事に絵の具まみれになりました。その時の子供たちの楽しそうなことったら!大惨事を避けるため、このワークショップは開始後約7分あまりで 完成ということになりました。しかし子供たちの絵を描く速さ、大胆さ、そしてエネルギーには本当にびっくりです。快く協力して下さって、かつそのあとピカ ピカに掃除して下さった保育園のみなさん、本当にありがとう(あっけに取られている私に、園長さんは「まあ、いつものことですから」と穏やかに微笑んでい ました)!私はその後子供たちの手を洗うのを手伝いましたが、十数人の子供の手をおやつを食べられる程度の清潔さに戻すのにざっと20分以上はかかってし まいました。ふう。

そして、何より嬉しかったのが、イウのクラスのアンジェルス先生とエドゥ先生が、子供たちにこの鯉のぼりの絵を描いてもらうために、素敵なお話を作ってくれたことです。それはこんな感じです。

「あるところに、ジャポ(日本)という国があって、ある日、たくさんの雨が降りました。たくさんの雨がふって、たくさんの風が吹いて、大きな波が たくさんやって来ました。そのうちの一つはあんまり大きな波だったので、海から出て浜辺と土のところまでざぶんとやってきて、家と、そこに住んでいた人た ちと、犬たちと、牛たちと、他のたくさんの動物たちを水に沈めてしまいました。公園や、車や、自転車もこわれてしまって、海の中にいた魚たちの家もなく なってしまいました。今日、みんなでこの魚の絵を描いてあげたら、その、家をなくしてしまったかわいそうな魚のことを思いながら絵の具で塗ってあげたら、 魚たちはまた静かな海の中で自分の家に戻れることになります。魚も、タツノオトシゴも貝も、サメもイルカも、みんな自分の家に帰ります。そしてもうその大 きな波は行ってしまったから、陸地に住むみんなにも、また家や、おもちゃや、自転車が帰ってくるでしょう。」

たまたま、イウのクラスは「海組」だったこともあって(他にも山、川、森などの組があります)たくさんの海の動物の写真やおもちゃや貝などが飾っ てあることもあり、先生たちは子供たちと海の魚たちを重ねてとっても上手に説明してくれました。みんな魚に家を作ってあげるような気持ちで一生懸命塗って くれたと思うと、本当にうれしい限りです。

 

一方温の学校でのワークショップも、違う意味でとっても面白いものになりました。
去年3月11日の後、校長先生と話し合って、日本の子供たちのために全校生徒1ユーロ募金というのをやったのですが、その時に、校長先生のアイ ディアで、せっかくだからといってただ募金活動をするだけでなく、3歳から12歳までの子供たちに、それぞれの理解度にあわせて、特別授業を組んでもらっ たのです。小さな子供たちは日の丸を赤く塗って日本の国旗を覚えてもらったり、大きな子供たちには日本の地理や地震と津波の仕組みを理解してもらったり、 といった感じでしたが、その去年の授業を覚えている子供が本当にたくさんいて、「ああ、あの津波があった日本の子供たちに送ってあげる魚の絵なのね!」と 喜んで参加してくれたのは本当にうれしかったです。

 

このワークショップは授業の一環でなく、放課後自由参加というスタイルをとりましたが、みんな本当に絵が上手でした。
ついでにイウの保育園で描いてもらった魚にも、目を描いてもらいました。スモックもエプロンも着ませんでしたが、まわりもほとんど汚れなかったし (笑)、みんな紙でなく布に絵の具を塗るというのが新しく面白かったみたいで、ちょっと洋服のパターンデザインみたいになりました。

そしてこの時期はちょうどカーニバルと重なっていたので、同じ布を使って、温にその後ミツバチの仮装衣装を作ってあげることにしました。6歳とも なると他の子供達は「スーパーマン」とか「宇宙飛行士」とか「ゴルミティ(アメリカのアニメ)」とか言い出すのですが(そして去年の温のリクエストは「千 と千尋の神隠し」にでてくる「かおなし」というオバケでしたが)今年の温のリクエストは「ミツバチ!」だったのです。「そんなにかわいいのでいいの?」と 一応聞いてみましたが、「うん!」とごきげんなので、こんな感じになりました。全身黒、黄色のテープで体を巻いて、羽に魚のあまりの青くキラキラする布を 使い、触覚をつけています。

一方イウの保育園では「仮装を楽しむのはこの月齢ではまだ早いので、別の方法でカーニバルのお祝いをします」という指針があり(そういえば去年別 の保育園に通っていた時に頑張って作ったロケットの仮装衣装も泣いて着るのをいやがっていたなあ)、カーニバルの前後毎日テーマを変えて、楽だけれども ちょっと特別という衣装を着せて行きました。これはそのうちのひとつ、「パジャマで保育園に行こう」という日の写真です。

ではみなさん、次回まで、ごきげんよう。
この3月11日から始まる新しい一年が、平和な年でありますように。

Column by Tomoko SAKAMOTO
建築とデザインの出版社Actarにて編集の仕事をしながら
カタルーニャ人でグラフィック・デザイナーのダビ・パパと一緒に
「遊んであげない。一緒に遊ぼう!」をモットーに
6歳の温(おん)と3歳のイウ、の二人の男の子を育てています

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コメント: 3
  • #1

    やよい (土曜日, 17 3月 2012 18:11)

    こんにちは、やよいと申します。はじめまして!
    といっても、バルセロネータの黙祷集会でごいっしょしたはずです。
    紫と緑のツイードのコートを着て、メガネをかけていたのが私です。
    あの会の幹事を務めさせていただきました。

    震災以来、フォルサ・ジャポというチャリティーコンサートの団体を
    音楽仲間たちと立ち上げて活動してきました(私はバイオリンを弾いています)。

    今回の追悼集会については、フォルサ内では否定的な意見が多く、
    領事館やCasaAsiaのご協力で広報していただいたものの
    20人くらい来て下さったら成功かな…などと悲観的になっていたので、
    あんなにたくさんの方がいらして下さって望外の喜びでした。
    ありがとうございました!

    参加者は約120人でした。撤収後、皆さんにお持ちいただいたろうそくは
    Catedralのパティオに奉納させていただきました。

    FacebookとMixiではご報告とお礼を掲載したのですが、
    コンタクトのない方々にはお伝えできず心苦しく思っています。
    お知り合いであの日いらして下さった方がいらっしゃいましたら、
    どうかよろしくお伝えください。

    友人のカメラマンが撮ってくれた写真や、
    連れ合い(カタランです)の撮ってくれたビデオなどもありますので
    もしご入り用でしたらおっしゃってください。お送りします。
    HPで追悼集会のことを書いて下さって、うれしく読ませていただきました。
    ありがとうございました。

    これを機会にお付き合い頂けたらうれしいです。
    どうぞよろしくお願いいたします。

    籠島 弥生

    yayoitama@yahoo.co.jp

  • #2

    ちづる (土曜日, 24 3月 2012 23:26)

    はじめまして。FBを、あちこち眺めてると、こちらにたどりつきました。
    素敵な写真と、遠くの地でも3月11日を想って下さった多くの人達の事を知る事が出来、感激しています。もし、よろしければ私のFBにシェアさせていただいていいでしょうか?
    色合いがとっても奇麗なのと、私、神戸震災の後、神戸の子ども達や親に、色塗りセラピーを手伝ってたので、こちらの写真や行動はとても感動でした。。

  • #3

    坂本知子 (火曜日, 27 3月 2012 14:36)

    ちづるさん、お返事が遅くなりました。もちろんシェアしてください。大歓迎です。とってもうれしいです。
    そしれやよいさん、本当に素敵な企画を素敵な場所で実行してくださってありがとうございました。黙祷中に聞いた波の音はきっと一生忘れません。フォルサ・ジャポのコンサートも聞きに行ったので、そちらの素敵な音楽のこともよく覚えています。ピアニストのタカオさんに誘っていただいたのです。彼とはまだ二度しかお会いしたことがありませんが、是非よろしくお伝えください。こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願いいたします。