-017.毎日ハラハラ。我が家の一歳児ごはん

離乳食時代にたまに重宝していたBIOのpetits pots「HIPP」
離乳食時代にたまに重宝していたBIOのpetits pots「HIPP」

-「野菜ホットケーキ」ができるまで-

 bébéの離乳食を始めたのは生後4カ月の終わりかけだった。フランスに本格的に住み始めた一年目の長い冬が終わり、初めてBIOマルシェににんじんとじゃがいもを買いにいった。その時、店先の冬枯れの一本道には、淡いピンクのもくれんの花が辺りを春めかせていた。そしてそれから約一年経って、もくれんの花びらが散る今、一歳半になる娘の食の傾向も随分と変わり、今では食べてくれるかハラハラしながら、毎日エンドレスな苦闘をくりひろげている。

 

離乳食を食べ始めた頃は、母乳以外のものたちを小さな舌でぺろっと味わうのを楽しんでいるようだった。初めは手づくりばかりだったけれど、時たま「petit pot(プチ ポ)」と言われる瓶詰めの野菜ピュレをあげたりする(フランス人のお母さんはたいていこれのみ)。満腹機能が未発達な段階だったので、あげればあげるだけ、親も安心する量を食べてくれた。

あげればあげるだけ食べていてくれた輝かしき離乳食時代。
あげればあげるだけ食べていてくれた輝かしき離乳食時代。

フランスの小児科では、お腹をくだすと言われるキャベツ、はくさい類、のどに詰まりやすい豆類はあげないこと、卵の黄身、ハムや魚は7カ月目から、とだけ言われ、それ以外に関する注意はすすんでしてくれない。当初私は日本の友人の送ってくれた離乳食づくりの本を見て、じゃがいも、にんじん、ほうれん草を、一気に茹でてピュレにし、氷容器に小分けにして冷凍し、毎回ひとつづつ取り出して混ぜてあげるようにしていた。トマトやいちごはアレルギーがあるとか刺激が強いとか、そんな知識も日本の本からのみ知り得た。アレルギーがあるか知るため、ひと種類ずつあげてゆく手法は日本人独特なものであった。

 

こうして、成長とともに離乳食づくりの手法は変わるものの、野菜やそれに魚や肉を混ぜたピュレを14カ月まであげていた。次第に、8本の歯が生えると固形をかじりたくなったようで、15カ月目からはよくゆでた野菜や肉、魚も手づかみでたべるようになっていく。ただ、その頃から好き嫌いがでてきて、一週間は食べてたものをある日見向きもしなくなる、の繰り返し。こうして、「全く食べない」、というステージにすすんでゆく。

ほうれん草&にんじん&じゃがいもホットケーキ。 最近はこの緑色を見るとあまり食べないので、緑が出ない程度にほうれん草の量を調整。
ほうれん草&にんじん&じゃがいもホットケーキ。 最近はこの緑色を見るとあまり食べないので、緑が出ない程度にほうれん草の量を調整。

もしもの時の、みそ汁やカレーを薄めた味わいの野菜作戦も効かない週もでてきて、最近ではめっきり野菜を食べなくなってしまった。

 

一歳児のフランスでの食生活の定番は、朝はビスケットかパンにヨーグルト、昼は肉か魚と野菜、16時頃おやつにビスケットやフルーツ、夜は野菜やお米だけで肉はあげない、というのが一般的。最初はこの食スタイルをクリアしていたものの、次第に朝はパン、昼はパスタかおにぎり、ハム、(夜食べないから)おやつはミルクのみ、夜は納豆ごはんのみ、と、ほぼ炭水化物しか摂らなくなった。これはやばいのではと、悩んで色々なフランス人ママに相談してみたところ、驚いたことに悩んでいる人はひとりも見当たらない。「歯が生え始めている時期だから食べたくないのよ。だから食べないなら放っておく。お腹すいたら何かしら食べるだろうし」「牛乳さえ飲んでれば大丈夫」「うちはヨーグルトと牛乳しか摂らない。フルーツも嫌いなの」とか、一歳児の嗜好を尊重するような答えばかり。アイスやお菓子、時にはチョコレートでさえ、食べたかったら好きなだけあげるという、その一歳児にあま〜い(あまいもの好きとも言える)文化、逆に言えばストレスを抱えない育児というものにびっくりするのであった。

にんじん&かぼちゃ&カリフラワーホットケーキ。このオレンジ色はよく食べる。
にんじん&かぼちゃ&カリフラワーホットケーキ。このオレンジ色はよく食べる。

私のように、チョコレートやお菓子などはごはんをきちんと食べないなら言語道断、なんとか野菜を摂らせようと悪戦苦闘をし、お互いに泣きたくなるような(時にはどちらかが本当に泣く)バトルはしていないのであった。

 

ある日、ストレスも極限にきて、一歳児にとっても私にとってもストレスのない食育でいいじゃないか、と、一生懸命娘用のメニューを考えた食作りを放り出し、大人と同じものを食べたいのならあげる、というふうにしてみる。すると、本人も食べるべきもの、という宿題のような義務感から解き放たれたかのように、ぐずったりすることはなくなり、お互いにストレスのない食卓ができあがった。相変わらず食べたり食べなかったりするわけだが、中でもやはり野菜だけはどうも食べない。「あきらめた!」と自分に何度いい聞かせながらもあきらめの悪い私は、仕方ないので野菜ピュレの離乳食に逆戻りすべく、ほうれん草とじゃがいも、にんじんとかぼちゃなどの組み合わせで野菜を煮込んでつくったスープを飲ませてみる。すると、ごくごくぱくぱく食べてくれる。しかし、当然のようにこの夢のような時間は1週間しか続かない。

小麦粉や、たまに混ぜる卵はなるべくBIO製品を選んで一歳児の身体に優しいものを。
小麦粉や、たまに混ぜる卵はなるべくBIO製品を選んで一歳児の身体に優しいものを。

飽きたのだろうか、途端に「いやいや」をして受け付けないのである。そこで、この野菜ピュレスープを野菜摂取の頼みの綱にしていたあきらめの悪い母は、クロワッサンならエンドレスに食べる娘の嗜好に注目し、この野菜スープに小麦粉を入れた野菜ホットケーキを無理矢理発明する。これならばいつでもどこでも持ち歩けて、お腹ぺこぺこの緊急時 にはすがりついてくるに違いない、と確信していた。案の定、ぽかぽかの日だまりの公園で気持ちがリラックスしている娘に「パンだよ」と手渡すと、「パ ン?」と、疑いもせず、その野菜のかたまりのようなパンをぱくぱくと食べるのである。「よし。ほうれん草と知らずにたいそうな量を食べている。」と、母は 内心ふくみ笑い。こんな小さなことでガッツポーズをしたい気持ちになる我が家の一歳児食をめぐる戦いは、これからもきっと果てしない。

公園や草原で好きなだけ遊んだら、その時が野菜を摂らせるチャンス。「はい、パン。」と母。「パン?(バクッ)。」と一歳児。

「野菜ホットケーキ」レシピ
1.子供の食べてくれない野菜を小さめに切って、適量のバターを溶かした大きめの鍋で炒める(組み合わせ例; カリフラワー、にんじん、かぼちゃ/ほうれん草、じゃがいも、にんじん)
2.水を適量(うちは400ml)入れ、コンソメの素をひと塊入れ(薄味にしたい場合は半分に砕く)、鍋でふたをしてぐつぐつ煮る。
3.とろみをつけるために途中でごはん(冷やでも熱いのでも)を入れて混ぜ、野菜が柔らかくなったら火を止めて、プロセッサーにかけてスープにする
4.甘くしたい場合は、3を鍋に戻し、ミルクを適量入れてかき混ぜながら鍋で煮立たせる。→ここまでが野菜スープのつくり方。これで食べてくれるなら5、6必要なし。
5.  冷めた3(あるいは4)に、小麦粉を2カップ入れてねばりがつくまでよく混ぜる。
6.ホットケーキを焼く手順で、バターをフライパンに溶かし、その上に5を適度な厚さにたらす。中に火が通るまで裏表焼いて出来上がり!

column by 下野真緒/Shimono Mao
1977年東京生まれ
女性ファッション誌で編集に携わった後、2009年南仏&パリへ留学
フリーランスエディターを続ける傍ら、2010年6月にフランス人と結婚
南仏ピレネー近郊に住む。新人ママの道、激進中!

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コメント: 2
  • #1

    食わず嫌いの子のママ (日曜日, 08 4月 2012 07:26)

    うちにも15か月のtoddlerがいいますが、この人も食べない食べない。。で、パンケーキ作戦うちも同じです!うちはお肉類が嫌いなのでこっそりフルーツのピュレーと共に肉を入れちゃいます。と、食べる食べる。完食してくれるとこっちも気分スッキリ。ほんとmaoさんの気持ちよくわかります。食事の時間はお互い戦いですよね。こっちは栄養とか考えて手間暇かけて作ってるのを一口で拒否。無理矢理口に入れようものならベーッと吐き出す。もう私にはストレスすぎるので食事は主人に上げてもらってます。彼は自分で作ってるわけでもなんでもないので気負いがなく、ベビーが食べなくても私みたいにブチ切れたりしません。あー、パクパクごはん食べてくれる子がうらやましい。うちにもそんな時がくるのかしら。

  • #2

    mao (火曜日, 10 4月 2012 16:59)

    ママさん、こんにちは。
    パパは自分で考えてメニューをつくるわけではないのでストレスを感じない、うちも同じです 笑。
    フルーツと肉類の組み合わせは何気にフランス料理でも多いですから、さっぱりとしていていいですね!
    離乳食の頃のように、キッシュのノリでパンケーキに肉類も混ぜる、私もやってみようかな!
    とにかく二歳まではこんな状態が続く子が多いと聞くので、半分あきらめつつ「休戦」にし、
    できることだけやっていきましょうね。何気に熱心に作らないであるものを食べさせる、としたほうが
    逆に食べたりするみたいで、こちらも気にならずにストレスにならないみたいですよ!
    今日会った3歳児は食べないものの、とても大きかったです。