-005.春をたのしむ-1

アトリエ春-1


三回目を迎える『季節をたのしむ』のテーマは、春。

今さらですがふと、こんな疑問が湧きました。
〜子ども達にとって、まだ数回しか経験したことの無い春、どのように理解しているのか?〜

いちばん小さな子は4歳、つまり、たった4回目の春なのです。

どのように思っているのでしょうか?

ところで私自身にとっての春を振り返ってみました。

30回以上40回以下(笑)、数々の春を経験しています。
チューリップやそら豆など、植物や食べ物の名前を幾つか思いつきましたが、

人並みの知識から来ているだけのことで、心に響きません。
そして目をつぶって心の奥深くを辿ってみると、ある風景が現れました。


〈四ッ谷の土手の桜、母と手をつないで歩く3-4歳の頃の私、暖かい空気、柔らかい日差し、笑顔の人々、甘い香り、、、〉

そういえば私にとっての春は、この風景のことなのです。

東京の四ッ谷で生まれ育ち、8歳まで住んでいた場所。家の目の前の土手には、桜が並んでいました。

高校まで通っていた学校もこの土手沿いにあったので、引っ越した後も、いつも、この風景と共に春を迎えていたのです。

学校から帰ると、近所の友達といつも遊んでいたこの場所は、東京の真ん中なのに自然に恵まれ、

桜以外にも、ツツジやバラ、ヤツデなど、様々な草花が咲いていました。
そのいつもの静かな土手が、春になると、たくさんの花見客で賑わいました。

花の色でカラフルになった土手が、さらに明るい雰囲気に満たされるのです。

出店で買ってもらった苺のアイスクリームを舐めながら、宴会で楽しそうな大人達の間を歩いていると、

何とも言えない幸せな気持ちに包まれたのでした。

私にとっての春は、土手の桜だけではなく、この風景にまつわる、出来事、感覚、気持ち、全てのことなのです。

しかもこの最初の記憶は3-4歳の時…原体験って、こういうことなのかも知れません。

きっと、4歳の女の子にも、自分なりのストーリーがあるに違いありません。

今まさに、それを生きている最中ですから…。
ちなみに彼女が作った作品は、てんとう虫でした。
みんなで土を捏ねながら話している時には、話題に上がらなかった虫なので、きっと彼女自身だけの世界に存在する、

素敵な思い出があるのでしょう!

Ⓒ Chocolat papa

 Column by 関美智子/Michiko Seki
フランス在住セラミック作家、アトリエCERAMICHI主催
コンテンポラリーでありながら同時にナチュラルな美しさも表現したセラミック作品を創作
レストランやカフェの器なども手がける
その他、展示会でアート作品を発表
セラミック(陶芸)をベースに様々なクリエイティブ活動を広げている
www.ceramichi.com

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コメント: 3
  • #1

    正岡俊彦 (月曜日, 14 5月 2012 10:06)

    写真もさることながら、貴女自身の幼少の頃の思い出が優しい詩を読んでいる感じで心に響きました。

  • #2

    関美智子 (火曜日, 15 5月 2012 21:13)

    素敵な感想を、どうもありがとうございました。
    子どもの頃の思い出を共有して頂けて、嬉しいです!

  • #3

    梅本浩史 (火曜日, 19 6月 2012 19:46)


    「心の原風景」って、多感な子供たちにとっても、大人になった私達にとっても、
    本当に大切なものだなって、よく感じる事が御座います。(^_^=)

    「季節の移ろい」を五感で感じながら、小さな生き物や草花たちに目を向けたり、
    触れてみたり、画いてみたり。そうやって育つことの大切さ。。

    先月、田植え作業で房総半島へ行くと、参加した子供たちは、田植えそっちのけ
    で、田土のどろ人形や、どろ団子で、もう夢中になって遊んでいましたよ。(笑)