-014.山の夏休み

みなさんこんにちは。


8月は本当に暑かったですね。夏というのは暑いものだ、とはもちろん十分承知しているつもりなのですが、 雨もほとんど降らず、気温が一定して高く、山に行ってもやっぱり暑い、という夏は、 バルセロナにやってきて住むようになってから思い出す限り初めてだったような気さえするくらいです。

私達家族の夏休みは、バルセロナから車で二時間ほど北上したところにあるピレネーの山間にあるプッチェルダ、という町でアパートを借りて子供たちのおばあちゃん(私の義母)と一緒に過ごすこと、そのあと友人たちを訪ねてアンドラを通ってトゥルーズまで旅して帰ってくる、というものでした。

毎回山へ旅行するたびに悩まされる問題が、子供の車酔い。長男の温はとても車に酔いやすく、薬を飲ませ、手首にはめる乗り物酔いバンド(親指下にある酔い止めのツボを刺激するため)も装着しますが山のカーブに差し掛かった時点で眠っていなかった場合、気持ち悪くなって吐いてしまいます。
車中には何枚もビニール袋を用意して気分が悪くなった時点で車を止めますが、もちろん彼にとってこんな経験が愉快なはずはなく、親の私達もいつもなんとかできないかと思っていました。

そこで今年試してみたのが、お父さんとおばあちゃんと荷物は車で行き、私と子供たちは電車で行って向こうで落ち合う、という方法。
そう、バルセロナからプッチェルダまでは電車でも行けるのです。
ほぼ各駅停車で途中接続待ちなどもあり、車で2時間のところを電車だと3時間はかかるのですが、車酔いをして何度も止まりながら行くのに比べたら3時間の旅は決して長くはないかもしれません。
このアイディアに温は大喜び、引越しみたいな量の荷物を詰めて自転車3台も後ろにつけたお父さんたちの車を見送った後、おやつとお弁当をもってさあ出発です。
「どっちが早く着くかな(まあそれはお父さんに決っているでしょう)」などと言いながらとても空いている車中で(車よりも時間がかかるという理由でほとんどの人は電車を選択しないのでしょう)街からだんだん緑に変わってくる景色を眺めながら、そして時々歩きまわったりご飯をたべたりしりとりなんかをしたりしつつ、車酔いせずに無事、プッチェルダの町に到着できました。

そしてお父さんとおばあちゃんが待っていたのは、町の本当に真ん中、小さな市庁舎広場に面した建物の最上階の部屋でした。
おばあちゃんがテラスから手を振ってくれています。

おばあちゃんはバルセロナ近郊のマタロという町に住んでいますが、毎年のようにこのプッチェルダの町で8月を過ごします。
みんなで旅行、なのでいわゆる里帰りではないのですが、おばあちゃんと一緒に家族のように何日も過ごすのは子供たちにとっては夏だけの体験です。
やはりおばあちゃんは子供たちにとって特別な存在、いろいろな日常のマナーについて教えてくれたり、昔のいろいろな話をしてくれたり、そして何よりも年上の人を敬う、というとても基本的なことを体で学べるというのはとても素敵なことです。

こちらはそのアパートのすぐ下の市庁舎広場にあった面白い彫刻。

馬の顔が実物大、実物の高さで、ネガポジ反転して置かれています。
「大きいね」「面白いね」などを行った後、ここから少し遠くまで散歩すればいろいろな場所で本物の馬も見ることができます。
同じ広場から見る夕焼けも、バルセロナから見るよりも空が随分広くて澄んでいます。

この町の名所の一つが人口貯水池。街では単に湖、と呼ばれていますが、白鳥が泳いでいます。
今年たまたま温のクラスで「白鳥」をテーマにいろいろ勉強したこともあって、温は白鳥についてとても詳しいのです。
「子供の時は白くなくてグレーなんだよ」
「白鳥は基本的にベジタリアンだけどときどきミミズっぽい虫も食べるんだよ」
(そこで柔らかいレタスの葉の残りなどを持ってきてあげてみました。とても良く食べました。)
「白鳥は卵から生まれる」「大きくなったら飛ぶこともできる」
「白鳥座という星座がある」「白鳥の湖というチャイコフスキーという人がつくったバレエがある」などなど、いろいろなことを勉強したようですが、そのあと本物の白鳥を見るのは多分初めてです。
おお、これがその白鳥か、というようにしげしげと見つめていました。

そして白鳥は陸にも上がります。しかもけっこう大きいんですよね。
二羽の子供はくちばしまでグレー。いわゆる「みにくいあひるのこ」のモデルとなった姿なのですが、ぜんぜんみにくくないどころか、とっても可愛いのです!

そして湖の畔の公園で、温が葉っぱを使って星の絵を描いたりしていたので、いろいろ試行錯誤しながらみんなで樹の枝や木の実を集めてこんな家?を作ってみました。

このプッチェルダという町の面白いところの一つは、フランスとの国境沿いにあるということ。
ユーロに通過統一される前は、文字通り国境には門があって、通過するときには警察によるパスポート・コントロールなどもありましたが、今は完全にフリーです。

そのから3キロくらいのところにある、リビアというフランスに囲まれたスペイン領の陸島?にある公園にも遊びに行きました。
とても興味深い国境設定でしょう?
ここで作っているヨーグルトやチーズは濃厚で独特の酸味と質感があってとても美味しく、この辺一帯の名物になっています。
けれどもこんなに小さな街でそんなに沢山の製品を作ることができないので、現在のところバルセロナなどでは決して食べることができないのです。

とても美しい市立公園で、遊具やプールも充実しています。その立地のせいもあって、フランス人とカタルーニャ人が半々くらいの割合でやって来ます。
温と友だちのマリオナの二人でカエルを見つけたので水に入って探しているところ。

今年の8月は、バルセロナもとても暑かったのですが、今年は山の方まで暑い日が続きました。
例年だと夏でも水が冷たいのであまり屋外プールは人気がないのですが、今年はどこのプールも大盛況。
オリンピック中継で水泳競技の様子を見ていたせいか、子供たちも毎日のようにプールで特訓したがって困るくらいでした。

そしてこの夏は、何週間もまとまった雨がふらなかったので、あちこちで山火事注意報が出されていました。
ありがたいことにダムの貯水量があったので水不足にはなりませんでしたが、ここでもし水不足だったら暑いけれどプールに入れない、ということになったかもしれず、本当に辛い夏になったことでしょう。
そして昨年の冬は雪不足でスキー場が本当に大変だったようです。
たまたま、かもしれませんし、温暖化の影響かもしれません。冬 にスキーが出来たり、夏にプールに入れたりという、その季節ごとに楽しめる遊びが当たり前のものではなくなってしまわないように、暑さ寒さのありがたさ、 を噛み締めつつ水を始めいろいろな資源を大事にするなど、家族でもできることをきちんと考えていかないとなあ、と思うのでした。

 

Column by Tomoko SAKAMOTO
カタルーニャ人でグラフィック・デザイナーのダビ・パパと一緒に
ブック・デザインとその周辺を手がけるSPREAD(www.spread.eu.com)
というスタジオを主催する編集者・ママのコラムです
「遊んであげない。一緒に遊ぼう!」をモットーに
6歳の温(おん)と3歳のイウ、の二人の男の子を育てています