東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで2月から6月に開催されていた「デザインあ展」が凄く面白かったので今日はその模様をスケッチします。NHKのEテレ番組で有名な「デザインあ」の展覧会です。デザインマインドと「身体感覚」についての視点が非常に面白いです。
以下、21_21 DESIGN SIGHTのウェブサイトからの展覧会概要の引用です。
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21_21 DESIGN SIGHTでは、2013年2月より、「デザインあ展」を開催いたします。NHK Eテレで放送中の教育番組「デザインあ」を、展覧会というかたちに発展させた企画です。
展覧会のテーマは、「デザインマインド」。日々の生活や行動をするうえで欠かせないのが、洞察力や創造力とともに、無意識的に物事の適正を判断する身体能力です。ここでは、この両面について育まれる能力を「デザインマインド」と呼ぶことにいたします。
(中略)
展覧会のディレクションは、NHK Eテレ「デザインあ」で総合指導を行なう佐藤 卓をはじめ、同番組に関わる中村勇吾、小山田圭吾の3名。デザインマインドを育むこととともに、デザイン教育の可能性に注目した、子どもと大人の双方に向けた展覧会をどうぞご体験ください。
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実際に「デザインあ展」で自分自身が改めて感じたのはデザインする際に必要な「身体能力」の重要性。身体感覚と言った方がしっくりいくかも知れません。デザインと身体能力ってどんなこと?と思うかもしれませんが、実は、素晴らしいデザインにはモノゴトを身体で感じるチカラがとても重要という、非常にプリミティブなことを気付かせてくれる展覧会でした。
例えば…
・トイレットペーパーを全て伸ばすととどれだけの長さになるのか?
・一握りのお寿司を分解するとどれだけの米粒が詰まっているのか?
・本はどんなパーツから出来上がっているのか?
・雑誌を粉々にするとどうなっているのか?
当たり前のモノたちを「身体能力」を通じて見てみると、新たな発見だらけだということに気付かされます。トイレットペーパーも雑誌も本も、改めて見ると、よくできています。今更ですが…
考えてみれば、身の回りのすべてのものはほぼヒトがデザインされているモノたち。
そのなかでも身近にある、優れたデザインは身体感覚のある試行錯誤から生まれてくることが、この展覧会では明らかにされてゆきます。良いデザインは、テーブルやパソコンに向かって頭に浮かんでくるものでなく、しっかりと身体感覚にフィットするかどうか?自分たちにとっての使い勝手がしっくりいくのか?それらを感覚的に何度もトライする先に見えてくるモノという真っ当な視点。しかし、そのデザインは、そういう試行錯誤を感じさせないほどにシンプルでさりげなく存在しています。
オリンピックやサッカーのゲームで優れたプレイヤーは非常に難しい技をいともシンプルに、しかも美しくプレイをすることができますが、これは能力と練習の賜物。いいデザインも、まるでそうした身体感覚を伴う訓練の先に爽快感をもって存在するのだと言わんばかりの体感展示の数々。
この「デザインあ展」はNHKがこども番組として製作した企画を展示にしたものですが、ケータイやゲーム、PCなど、身体感覚を伴わない便利なツールが氾濫し、手で文字や絵を書いたり、手で何かを創ったり、場合によっては掴み合いの喧嘩をしたりする機会等(不要かも知れませんが…)がとても減っている「今」だからこそ「身体感覚」の大切さを訴えかけているようにも感じます。
この「デザインあ展」自体は、こんな小難しいことは、一切、語っていません。しかし、いろいろと考えさせられる、とても刺激的な展覧会でした。すでに閉会していますが、行けなかったヒトは、このコラムで少しでもその楽しさと魅力が伝われば幸いに思います。
子どもだけでなく、自分自身も、改めて「手」をつかう重要性を感じました。
column by 梶谷拓生/Takusei
KAJITANI
エクスペリエンスデザインを仕事にしてます
技術やデザインやヒトを融合して新しい体験やサービスを創りだす仕事です
サッカーをこよなく愛し、今も地元チームのミッドフィールダーとして活動中
サッカー好きな長男、音楽好きの長女を持つパパでもあります
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