マタニティにやさしいクニ
合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの平均数)は2.01。ヨーロッパではアイルランドに次いで2番目に高い値を誇る、ここフランス。政治イノ ベーション財団が2011年に実施した調査によると、フランスの若者の60%近くが家庭を築き、子どもを持ちたいと望んでいるそうで、この数字はヨーロッ パで首位を飾るとか。 実際、私がパリに移り住んで最もカルチャー•ショックを受けたのは、“子供は3人以上欲しい”と、20代前半のフランス人の若者たちが、瞳を輝かせながら語り合っていることでした。
このような近年のフランスのベビー•ブームは、まず国の家族政策によって説明できるでしょう。フランスは国立病院での妊娠中の定期健診、および出産医療費は、社会保障に加入している人なら、ほぼ全額が返金されるシステムになっています。 また、出産休暇は産前6週間、産後10週間となっており、日本より産後に2週間長いことに加えて、産休中の給与も保証されることになっているのです。
一方、フランスで伝承されているエデュケーションも見逃せません。この国では、“女性の魅力が最も開花するのは、妊娠期間”と言われており、驚きべくことに妊婦は“美しい”と称賛される対象なのです。よって、私の周りの奥様たちは妊娠中、フランス人のご主人にはもちろん、親類や時には街角でも“キレイ”だと賛美され、「快適なマタニティ•ライフを過ごせた」という方が多数。このようにマタニティ至上主義のごときフランスでは、「人生で最も美しい出来事とは、 子供を授かること」だと、シンプルに明言する男性も少なくありません。
そんなお国柄のフランスだけに、妊婦への配慮も格別。メトロをはじめ、県庁やスーパーマーケットのレジなどの公共施設においても、マタニティは優先されます。いま私は第二子を妊娠中ですが、たとえば第一子妊娠中の出来事。とあるパリの一角で主人を15分ほど待っている際、突然の雨に見舞われました。その姿を長らく見ていたと思われる車に乗ったマダムから「お宅や最寄りの駅まで送りましょうか?」と、声をかけていただいたことがありました。また、前回の妊娠後期に鼻歌をうたいながら散歩をしていたところ、よほど私の鼻歌が不気味だったのでしょう。それを通りすがりのマダムは“陣痛によるうめき声”だと勘違い。そして、「だ、大丈夫……⁉︎ 病院まで送りましょうか?」と、お気づかいいただいたことも。さらに最近の私は、あまりのツワリのひどさに、フランス人とのお仕事を土壇場であえなくキャンセルすることになってしまったのですが、「妊婦を最もリスペクトする僕としては、妊婦には逆らえない」と、スムーズにご理解いただけ上に、「僕の妻もツワリがひどかったんだよ……」と、思いのほか慰めていただいたり、と。マタニティという身分だけで日々、周囲からの心くばりがいっぱい。
そんなハート•ウォームな思いやりは確実に伝染します。以来、私ども夫婦もマタニティに格別な配慮をはらうようになったのは言わずもがな。そういった日常での心遣いのやりとりが、マタニティに快適な生活を提供するだけでなく、ひいてはこの国の出生率にも少なからず影響を与えているように私には思えてなりません。マタニティにやさしいフランスーー。近い将来、私自身も我が子に対し、マタニティを尊重するエデュケーションを、行っていきたいと思っています。
時に、ほんのりロハスな生活を送っている私。最後に、私が使用してみて効果の高かった、マタニティにもやさしいロハス•アイテムをご紹介しましょう。
みなさんは“経皮毒”という言葉をご存知でしょうか? 経皮毒とは「日用品に含まれる化学物質が皮膚から侵入し体の中で有害な作用を引き起こすこと」を指します。
私たちが使用しているシャンプーやボディ/ハンドソープ、化粧品、ハミガキ粉などの日用品には、皮膚から吸収されやすい化学物質がたくさん含まれており、それらが体内へ長期に渡って蓄積されることにより、アトピー性皮膚炎をはじめ、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気の原因に繋がる可能性もあるそう。実際に、子宮筋腫の手術をした私の知人は術後、ドクターから「術中に某メーカーのシャンプーの香りがした」と言われたらしいのですが、それは正に彼女が愛用していたシャンプーだったとか……!もしも、その話が本当ならば、胎児への影響も少し懸念されますよね?
その経皮毒は体の部位によって吸収率が異なります。こちらは、ある製薬会社の発表による各部位の吸収率のデーターです。
腕の内側を1とした場合
・頭 3.5倍
・ひたい 6倍
・あご 13倍
・わきの下 3.6倍
・手のひら 0.83倍
・背中 17倍
・性器 42倍
・かかと0.14倍
基本的に角質層が薄い場所ほど吸収量が高くなる模様。長年、無添加•無香料のオーガニック•シャンプーを愛用してきた私ですが、リキッド•シャンプーより石油系の合成界面活性剤や発泡剤の含有率が少ないと言われる固形石鹸に半年前から変更、これひとつで頭からつま先まで洗っています。
そんな 私のお薦めは、フランス産オーガニック•オリーヴ•ソープのこの二品。OLIVIERS & CO.の“Pain de Savon BIO A l'Huile D'Olive"と、日本ではマルセイユ石鹸という愛称で知られるMARIUS FABRE.Jeuneのオリーヴ•オイル72パセーント配合
した“Savon de Marseille A l'Huile D'Olive"です。どちらも泡立ちがクリーミーで洗い上がりがさっぱり。なのに、リキッド•ソープでは決して得られない、抜群の保湿力。
日本と比較して湿度が低く乾燥していて、水道水のカルキが非常に強いフランス。ドライ•スキンの私はかつて冬の間、大量の高保湿ボディ•クリームやヘア•トリートメント剤を必要としていましたが、固形石鹸に変えて以来、それらの消費量が激減……‼︎ また、赤ちゃんをも洗えるお肌に優しい石鹸ゆえ、乾燥、ニキビ、アトピーなどのトラブルにも有効だと言われている優れもの。妊娠中は体質が変わってドライ•スキンになる方もいらっしゃいますよね。ぜひ一度、フランス産の無添加オリーヴ石鹸をお試しください。
column by Mihoko Kaneda
長年に渡り音楽ライターとして活動してきたが、2006年に渡米
2007年より拠点をパリに移し、ライフスタイル•ファッション誌をメインにジャーナリス トとして従事した後、フランス人男性と結婚
近年は、フランスのTVドラマや映画にも出演
代表作はフランソワ•クリュゼやシャルロット•ゲンズブールと 共演を果たしたイヴァン•アタル監督による“Do Not Disturb”など
現在、第二子を妊娠中
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むらくも あつこ (水曜日, 12 2月 2014 16:53)
20年前にパリで、17年前に日本で出産しました。パリはお母さんに優しい、日本は子どもに優しい出産だと思います。
もてもゆったりと優しい空気に包まれたことを思い出しました。
よいマタニティーライフを!
Mihoko Kaneda (木曜日, 13 2月 2014 12:52)
むらくも あつこ様
こんにちは、心あたたまるコメントを誠にありがとうございました。
パリと日本でご出産の経験があるなんて、
とてもドラマティックな人生ですね!
そうか、やはりパリは昔からマタニティにやさしい国だったのですね。
そして日本は子供にやさしい国とのこと。
まだ第一子を出産してから帰国はしていないのですが、いつか子供と帰る日が楽しみになりました。
また、日本のマタニティや子供事情をよろしければぜひ、お聞かせくださいね。
Keisuke Iguchi (水曜日, 05 3月 2014 11:34)
フランス、素晴らしい国ですね!
産後の、育児休業事情も気になります。
経皮毒で合成香料のエピソードがありましたが、
これは下水の処理でも問題になっているそうですよ。
処理をした下水は、飲めるほどにキレイになっても、香料は分解されにくいんだとか。
つまり香り付きのキレイになった水が、川を流れていくというワケです。
それでは、よいマタニティ・ライフを!
余談ですが、Mihokoさんの鼻歌も聞きたいところです(笑)。
Mihoko Kaneda (月曜日, 24 3月 2014 05:46)
Keisuke Iguchi 様
日本を代表するロハスの巨匠であり、有能なエディターのIguchiさんにお読みいただき、光栄です! merci beaucoup
それにしても、さすがキレる視点ですね。
女性のみならず、
男性の育児休暇も日本と比較して断然、
取得しやすいフランス。
いつかコラムでご紹介していきたいと思っております。
また、合成香料についての大変興味深いエピソードにも多謝! 妊娠中のいまは極力、それは避けているのですが、女の子だもの、たまに香りの良い製品に癒されたいときもあるのは事実。しかし、iguchiさんの分かりやすい下水や川の解説を聞いたら、今後も避けていきたくなりました。
さて、私の鼻歌はとても危険なようなので、マタニティのいまは禁止中。あと4ヶ月も我慢しなきゃいけないのは結構、辛いです(笑)。