息子の左足から繰り出されたシュートは、綺麗な弾道を描いて、ゴールネットを揺らせた。
その時、僕は息子と同じチームのベンチにいた。
いや正確には僕がいるチームに息子を入れてもらっての真剣勝負だった。
いろんな意味で感動した。
得点が嬉しいのか、チームの歓喜が嬉しいのか、息子の成長が嬉しいのか、よくわからなかった。
感慨が深すぎて、すぐに喜びが表現出来なかった。
でも、何か、これは凄い、という感覚があった。
(1)ピッチに女性か中学生以下が一人以上いること
(2)ピッチに女性か30代以上が一人以上いること
(3)ピッチに40代以上がいること
毎年1回開催される建築家たちのサッカー大会はこんなユニークなルールで競われる。
今年は14回目、日本を代表する建築設計事務所や大学の建築系研究室、建築出版社ら21チームが、
東京、東北、関西などから茨城県の波崎に集結して開催される。
「(サッカーと建築を)愛する!、楽しむ!、見届ける!」
アトリエワンの貝島桃代さんの絶叫のもとに全員が復唱する。
青空の下でその掛け声が響き渡る開会式からAcup2015はスタートした。
チームによっては大学生が主体になったり、女性主体だったり、平均年齢が40歳代だったり。
ホノボノしているのか、真剣勝負なのか?玉砕混合のシーンが繰り広げられる。
日頃は建築を高尚に語るような建築家たちの長老たちが、その教え子たちのフェイントに翻弄されるシーンが笑える。
決勝戦に近ずくにつれ、徐々に試合は熱さと激しさを増し、真剣に削り合うシーンも生まれる。
そして、勝ったら歓喜乱舞、負けたら大人気なく泣き崩れる。
vs クルゼイエロ(手塚建築研究所)、4-0で快勝!
今回の我がチームfcAは7分半でチーム総入れ替え、全員サッカーのフォーメーション
決勝戦は、AC578(日本大学理工学部建築学科) vs
FC OTOT(TOTO)。AC578が昨年同様で2連覇優勝。
みんなで決勝戦を「見届けた」あとの閉会式。
ちびっこもシニアも世代を超えて称えられます。
本大会の主催事務局でもあるopenA馬場氏、
studioKOZ小津氏らが中心となり、集まった我らがfcAチーム。
丁度、9年前、息子が小学4年生の時に、小学生枠として一度この大会に参加した。
当時は130センチほどの息子が、今では180センチの若者だ。
あれから、すっかりサッカーにのめり込み、高校サッカーを経て、これから、どの道に進むのか?
今は、次の進路を考えている時期。建築に少し興味があるらしい。
そんな息子をAカップ、そして我がチームfcAは、暖かく迎えてくれ、サッカーと建築が大好きな大人たちは、いろんな話をしてくれた。
恐らく、父親からも母親からも、同世代の友人からも親戚からも聞くことができない話をしてもらったんだと思う。
僕は、今年、改めてこのサッカー大会の奥深さを実感した。
失われつつある「大家族」的(皆、家族、親戚ではないが...)なコミュニティがサッカーと建築を通じてここに鮮やかに生き伸びている。
おそらく、昔ながらのコミュニティの心が、カタチを変えて参加者のなかに生まれている。
日本の建築家たち、あるいはサッカー狂たちが(多分)無意識のうちに設計した図面のない財産。
「(サッカーと建築を)愛する!、楽しむ!、見届ける!」
この言葉がAカップというコミュニティをデザインしている。
日本の建築家たちは想像を超えて凄い構想力を持っている。
多分、僕は14年目にして、あのゴールの瞬間にその素晴らしさを改めて実感してしまったのだ。
あのミドルシュートは、なかなか綺麗だった。
それに引き換え、自分のプレーの不甲斐なさは残念すぎて落ち込んだ…。
でも、また来年、きっと気力体力を復活させ、あれを超えるゴールを目指したい、と密かに思っている。
*ご興味のある方へ:「Acup」のFBページはこちらです。
→https://www.facebook.com/ACUP2001/?fref=ts
*「Acup」のコンセプトを描いた「松島憲章」
1、愛する
我々は、サッカーと建築を愛する。
愛するが故、いくつになってもこの二つにこだわり、プレーを続ける。
2、楽しむ
我々は、この大会の時間と空間を楽しむ。
この場は、サッカーと建築でつながった純粋にフラットなフィールドである。
3、見届ける
我々は最後まで試合を見届ける。
たとえヘロヘロになっていようが、決勝戦の試合のホイッスルが鳴るまで
見届けなければならない。
column by 梶谷拓生/Takusei
KAJITANI
エクスペリエンスデザインを仕事にしてます
技術やデザインやヒトを融合して新しい体験やサービスを創りだす仕事です
サッカーをこよなく愛し、今も地元チームのミッドフィールダーとして活動中
サッカー好きな長男、音楽好きの長女を持つパパでもあります
コメントをお書きください